さんご草の保護育成など

サンゴ草の保護育成について

能取湖畔は、網走国定公園の一部で、秋になると燃えるように色づくサンゴ草が有名である。
年間20万人とも言われている観光客が足を運び、毎年のサンゴ草祭りが大盛況で開催されている。

ところが、肝心のサンゴ草群落が年々小さくなっている。
昔は湖畔から一帯至るところに生えていたというが、能取湖湖口を掘削したこと等から、湿地の乾燥化が進み、ヨシ等の雑草が勢力を伸ばしている。

群落は、背の高いヨシに隠れて、赤くなっても色のさえないところが多く、『このままでは大変だ』『何とかしなければ!!』という声が各方面から持ち上がり、卯原内観光協会と、網走国定公園管理事務所が、この対策に乗り出し、取り敢えず、面積7,200㎡、掘削深さ0.5mの能取湖における土地の形状変更(掘削)の許可を道知事に行い、その許可を受けて昭和55年よりサンゴ草の栽培実験、いわゆる人工の湿地で育成し、大群落再現へと期待をかけ、ヨシ原と化した湖畔一部、80アール程をテスト用地に充て、9月末に、プラオで起こしロータリでヨシの根を全部切り、そして平らに整地した後、サンゴ草の種をまいて、ポンプで湖内から水を注入し、常時水がかぶった人工の湿地をこしらえたのである。

その結果は、上々で、サンゴ草はスクスク育って、ヨシはすっかり枯れてしまい、ほかの雑草もほとんどない、見事なサンゴ草群落になっており、『ヨシの根を切って、塩水を入れ、枯らしてしまえば、うまくいくはず』と当時の本間勝雄観光協会会長の狙いがピタリと当たったのである。
卯原内観光協会では、その秋にサンゴ草が色づき、実験の成功を確認してから、市などに協力を求め、この方法を卯原内の湖畔全域で実施する計画。『かっての大群落再び!!』とばかり意欲満々であった。
この成功をもとに、昭和56年度には更に2万9,700㎡を造成して、将来は、群落内をめぐる、遊歩道を作る計画もあり、網走国定公園の中核をなす大きな存在として期待を望み、『サンゴ草群落地は、網走市の大きな観光資源。それを育て、守るのはわれわれの使命でもある。今後はポンプアップして、水を十分に与えるなど、年間を通じて管理していかなければならないと』卯原内観光協会の本間勝雄会長は力説していた。

サンゴ草をきれいに見てもらおう地元の人達で清掃ごみ拾い

サンゴ草の群生する、能取湖畔を、きれいにしようーと、卯原内と、能取の漁港一帯で清掃作業が行われた。(昭和56年7月10日)

卯原内側の清掃には、網走国定公園管理事務所、土現、網走市水産漁港課のほか、地元の西網走漁協卯原内実行組合、卯原内観光協会、同部落会から合わせて60人が参加。
能取側には西網走漁協能取実行組合20人が繰り出した。卯原内の漁港周辺は、特にサンゴ草のじゅうたんを敷き詰めたように、鮮やかに染まり、この時期には“サンゴ草祭り”も行われ、多くの観光客で、賑わうが年々ゴミが散乱し始める。

参加した人たちは、それぞれ袋を手に作業開始。
放置されたままの網の切れっ端や流木、空きかん、紙くずなどを拾い集めた。

なかには、土の中に埋まっていてなかなか引き抜くことが出来ない、ロープなどもあり、みんな悪戦苦闘。約2時間後に作業を終えた。

当初は、4トン車で2台くらいと思っていたが、5台分はありそうと、集められたゴミの多さにびっくり。
『川の切り替えなどによってサンゴ草がだんだんと減っていく。
今後は種を蒔いて範囲を広げていきたい』と群生落地整備の計画を立ている。
また、卯原内の漁港が網走開建によって、拡張される予定もあり、漁具置き場、作業場などの用地をはっきりと区画することも、自然保護の課題だという。

なお、卯原内観光協会は、これからも定期的に周辺の清掃を続ける予定である。(昭和56年7月11日の網走新聞より)

サンゴ草育成、保護による群落地整備事業

サンゴ草保護、育成のため雑草の繁殖にともない、群生地が狭められている現状から、試験的に、プラオ、ローラーペーター等の農耕機械により、その雑草を取り除き、サンゴ草の種子を蒔き、育成事業を施行したところ、その個所の育成が、ことの外良好の成果を得たことにより、その結果をふまえ、更にその区域を拡大し、サンゴ草群落の拡張に努めるべく、網走市に対しての整備事業に必要とする助成金の補助を、道知事宛には、土地の堀さく及び特別地域内土地形状変更(自然公園第17条第3項の規定による網走国定公園の特別地域内)の許可申請並びに国定公園事務所には、サンゴ草種子の採集許可願(群落地造成(掘削)時へ蒔いて育成する採集種子の量約1.50㎏)を各々に提出要請に赴く等して、その認可、許可をまって、能取湖サンゴ草群落地整備事業とし、網走建設株式会社との工事契約を取り交わし、次の通り施行した。


  • 工事面積 28,000㎡
  • 行為目的 サンゴ草保護育成のための雑草除去
  • 行為方法 プラオ、ローラーペーターにより雑草の根を掘り起こし取り除き、サンゴ草種子を幡種をする。
  • 工事期間 昭和56年9月25日~10月5日
  • 工事概要 イ、不陸調整 28ha
           ロ、耕地(ブラッシュブレーカー)28ha
           ハ、砕土(プライングハロー) 28ha
           ニ、鎮土(ローラー) 28ha

この工事には、市よりの助成金、借入金、育成積立金を合わせて、1,140,600円を要したのである。

これが後の群落の優美が、絶賛の好評を得ているが、年を過ぐるに従い、群落地の形状が起伏、及び雑草の繁茂も多いため、サンゴ草の草丈が、雑草より低いため折角の美観が損なうことも憂慮されるため観光協会の年度事業とし、群落地内の整備として、不陸調整(ブルドーザー使用、砕土(デスクハロー)、鎮土(ローラー)を続けることとし、市当局よりの保護、育成費の補助を受けていくこととした。

以来、サンゴ草群落地内の整備作業及び群落地内の雑草除去のための機器借料と人夫賃の諸経費を、補助事業等の内容として交付を受けその結果効果は、秋期の湖水の流氷により、群落地内が掘り込まれ、水溜まりが出来て、留水箇所のサンゴ草が、生息不能になるためにも整地をし、雑草除去及び、保護育成に努めている。

その後毎年、群落地内の整備整地を施しており、現在の群落地面積は38,000㎡である。

いずれにしても、昨今は、国内的にも貴重な、塩性植物でもある『サンゴ草群落』が、雑草に侵害されて、育成に支障をきたす恐れがあることから、それ等を駆除し、『サンゴ草まつり』をはじめ、観光資源の保護、育成を図る必要があるため、卯原内観光協会の年度事業として施行しなければならないことを繰返し提言をすることを忘れてはならないだろう。

ここで『サンゴ草』の一年間の保護監視の現状について、記しておく。
いまや、海外にも紹介されるほどの、網走国定公園内の、能取湖南岸一帯に群生するサンゴ草大群落地であるが、今から30年ほど前の昭和44年の能取湖口を切り開き、永久永路となってから、一時期は年々消滅減少し、このままでは全滅してしまうのではないかと、心配されたこともあった。
これは湖口を開けた事によって、湖内の水位が下がり、サンゴ草の群生する湿地の、乾燥化が進んできたためである。

人工湿地で群生地づくりに成功した結果、現在の大群落となったが当時最大のイベントでもある毎年の『サンゴ草祭り』に訪れる人たちに最良の色づきの『サンゴ草』を見てもらいたい願望から、その年度の『サンゴ草祭り』の終わった時期から、すでに次年度の『サンゴ草祭り』に備え、保護、育成に取りかかるのである。
秋霜によって枯れ果てた大群落地の整地は、秋晴れの続く時期は海水の干満を見計り、関係機関の承認、許可を得、業者の依頼、整地作業の現場を見極め、起伏の状況や、湖水の出入流の状況は特に注意をしなければならない。
塩水の流入が多くても、少なくても適しないのである。
卯原内川の水量と塩水混の可否によって『サンゴ草』の育成、色づきに影響があり、群落地内の冬期の浸水の状態によっても関係があることからも、その現状を充分配慮を要するのである。

湖の冬期間の冠水の状況によっては次の年の生育にも関係がある。

やがて春に……、湖水の氷結も遠ざかる時が一番気にかかるのである。

湖畔の融雪も進み群落が顔を見せる時期にもなると冠水状態が心配でもある。
その良否によってお、今春の『サンゴ草』の発芽が左右されるからである。
その頃から群落地への湖水の流出入を観測しなければならない。
やがて春日和が続き、『サンゴ草』が目をふき出してくる。
段々群落一帯が緑を増してくると、『サンゴ草』と雑草の背くらべが始まり、その年の日照りの状況によって『サンゴ草』の生育が異なることから関係者にとっては、気掛かりのときでもある。

このように、1年を通じての関係者と『サンゴ草』との関わり合いは絶えないのである。